AGAガイドラインと自毛植毛の推奨度

AGA(男性型脱毛症)の治療法として、薬物療法と並んで検討されるのが「自毛植毛術」です。日本皮膚科学会などが作成するAGAガイドラインでは、自毛植毛術は推奨度B(行うよう勧める)と位置づけられており、一定の有効性と安全性が認められている治療法です。自毛植毛術とは、AGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部から、自分自身の毛髪を毛包ごと(毛根を包む組織ごと)採取し、薄毛の気になる前頭部や頭頂部などに移植する外科的な手術です。移植された毛髪は、元の部位の性質を引き継ぐため、生着すればその後も自分の髪として成長し、生え変わり続けることが期待できます。この点が、かつらや増毛とは異なる大きな特徴であり、より自然な見た目と永続的な効果を求める方にとって魅力的な選択肢となります。ガイドラインで自毛植毛術が推奨度Bとされている背景には、多くの臨床研究や症例報告によって、その有効性が示されていることがあります。特に、薬物療法(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなど)で十分な効果が得られなかった場合や、薄毛が広範囲に進行している場合、あるいはより確実な見た目の改善を希望する場合などに、有効な治療法として考慮されます。自毛植毛術の主な手法には、「FUT法(ストリップ法)」と「FUE法」があります。FUT法は、後頭部の頭皮を帯状に切除し、そこから毛包を株分けして移植する方法で、一度に多くの毛髪を移植できるメリットがあります。一方、FUE法は、専用のパンチを使って毛包を一つ一つ採取し、移植する方法で、線状の傷跡が残りにくいのが特徴です。どちらの手法を選択するかは、患者さんの状態や希望、医師の技術などによって決定されます。ただし、自毛植毛術は外科手術であるため、いくつかの注意点も理解しておく必要があります。まず、費用が高額になる傾向があり、保険適用外の自由診療となります。また、手術後には一時的な腫れや痛み、かさぶたなどのダウンタイムがあります。そして、移植した毛髪が全て生着するとは限らず、生着率には個人差があります。ガイドラインは、自毛植毛術を検討する際に、そのメリットとデメリット、リスクなどを十分に理解し、経験豊富で信頼できる専門医のもとで施術を受けることの重要性も示唆しています。