私がドラッグストアで薄毛隠しを手にした日のこと
もう何年も、鏡を見るのが憂鬱でした。特に、明るい照明の下で自分の頭頂部を見ると、地肌が透けているのがはっきりと分かり、心臓がキュッと縮むような思いでした。ウィッグを試着しに行ったこともありましたが、高価な上に日常使いするには勇気が出ません。そんなある日、インターネットで「女性の薄毛隠し」と検索し、ドラッグストアで手軽に買えるアイテムがあることを知りました。しかし、それを買いに行くには大きな壁がありました。レジに持っていくのが恥ずかしい、誰かに見られたらどうしよう。そんな気持ちが渦巻いて、何日もドラッグストアの前を通り過ぎるだけでした。でもある日、「このまま悩み続けるのはもう嫌だ」と、意を決して店に入りました。ヘアケア用品が並ぶ棚の、少し目立たない場所にそれはありました。心臓はバクバクしていましたが、他の商品と一緒にカゴに入れ、足早にレジへ。幸い、誰にも何も言われることなく会計は終わりました。家に帰り、震える手で箱を開け、説明書を読みながら恐る恐る分け目に使ってみました。ポン、ポン、とパフを叩くだけ。鏡を見て、思わず「えっ」と声が出ました。あれほど気になっていた地肌の白い部分が、嘘のように目立たなくなっていたのです。不自然な感じは全くなく、まるで髪が増えたかのよう。その日を境に、私の世界は変わりました。上からの視線を気にすることがなくなり、自信を持って人と話せるようになったのです。あの日の小さな勇気が、私の心をこんなにも軽くしてくれるなんて。ドラッグストアの一角で見つけたあの小さなアイテムは、私にとって魔法の小箱のような存在です。