薄毛の悩みは男性だけのものではありません。近年、分け目が目立つ、髪全体のボリュームが減るといった悩みを抱える女性が増えています。女性の薄毛にも、保険が適用されるケースと、そうでないケースがあります。まず、FAGA(女性男性型脱毛症)や、びまん性脱毛症と呼ばれる、特定の原因がはっきりしない加齢やホルモンバランスの変化に伴う薄毛は、男性のAGAと同様に美容目的と見なされ、保険適用外の自由診療となります。専門クリニックで行われるミノキシジルの処方や各種注入治療などは、全額自己負担です。一方で、女性の薄毛の背後には、男性以上に様々な身体の不調が隠れていることがあります。例えば、鉄欠乏性貧血です。鉄分は髪の健康に不可欠な栄養素であり、不足すると髪が細く抜けやすくなります。この場合、内科や婦人科で貧血の治療を行いますが、その診察や鉄剤の処方にはもちろん保険が適用されます。また、甲状腺機能の異常も、女性に見られやすい脱毛の原因です。甲状腺ホルモンのバランスが崩れることで、新陳代謝が乱れ、髪が抜けてしまうのです。この甲状腺疾患の治療も保険診療の対象です。さらに、産後の急激なホルモン変化による「分娩後脱毛症」や、過度なダイエットによる栄養失調、あるいは膠原病などの自己免疫疾患が原因であることも考えられます。これらのケースでは、原因となっている病気や状態そのものへのアプローチが保険適用の治療となり、結果として薄毛の改善に繋がります。そのため、女性が薄毛に気づいたら、まず婦人科や内科、皮膚科などで全身的な検査を受けることが非常に重要です。