-
育毛剤と発毛剤に含まれる代表的な有効成分
育毛剤と発毛剤の効果の違いは、配合されている「有効成分」の違いによって生まれます。それぞれの製品に、どのような成分が、どのような目的で配合されているのかを知ることは、製品選びの精度を高める上で非常に重要です。まず、「育毛剤(医薬部外品)」には、多種多様な有効成分が、製品のコンセプトに合わせて組み合わされています。代表的なものとしては、以下のような成分が挙げられます。血行促進成分:「センブリエキス」「ビタミンE誘導体(酢酸トコフェロール)」など。頭皮の血流を良くし、毛根に栄養を届けやすくします。抗炎症成分:「グリチルリチン酸ジカリウム」「アラントイン」など。フケやかゆみを抑え、頭皮の炎症を防ぎます。皮脂分泌抑制成分:「ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)」など。過剰な皮脂をコントロールし、毛穴の詰まりを防ぎます。毛母細胞活性化成分:「t-フラバノン」「アデノシン」(一部製品)など。毛根の細胞に働きかけ、髪の成長をサポートします。これらの成分が複合的に働くことで、頭皮環境を健やかに保ち、抜け毛を予防します。一方、「発毛剤(第一類医薬品)」に配合されている有効成分は、現在の日本では「ミノキシジル」ただ一つです。ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発された成分で、血管を拡張する作用があります。頭皮に塗布することで、毛根周辺の毛細血管を広げ、血流を大幅に増加させます。これにより、毛母細胞が活性化され、休止期にあった毛根を成長期へと移行させ、新しい髪の発毛を促すと考えられています。また、すでに生えている細い髪を、太く長い毛へと育てる効果も実証されています。育毛剤が、いわば「漢方薬」のように様々な生薬を組み合わせて体質改善を目指すのに対し、発毛剤は「特効薬」のように、一つの強力な成分で直接的な効果を狙う、というイメージで捉えると分かりやすいかもしれません。
-
脂漏性脱毛症を引き起こす主な原因
脂漏性脱毛症の直接的な引き金は、皮脂の過剰分泌とマラセチア菌の異常繁殖ですが、その背景には、私たちの日常生活に潜む様々な原因が関わっています。その原因を知ることは、効果的な予防と対策に繋がります。最も大きな原因の一つが、「ホルモンバランスの乱れ」です。皮脂の分泌は、男性ホルモンによって促進されるため、ホルモンバランスが崩れて男性ホルモンが優位になると、皮脂腺が刺激され、皮脂が過剰に分泌されます。ストレスや睡眠不足、不規則な生活は、このホルモンバランスを乱す最大の要因です。次に、「食生活の乱れ」も皮脂の分泌量に直結します。特に、脂質の多い揚げ物やジャンクフード、糖質の多いお菓子や清涼飲料水の過剰摂取は、皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を活発にします。また、皮脂の分泌をコントロールする働きのあるビタミンB群(特にB2、B6)が不足することも、症状を悪化させる一因となります。さらに、「間違ったヘアケア」も原因となり得ます。頭皮のベタつきが気になるからと、洗浄力の強すぎるシャンプーで一日に何度も髪を洗うと、頭皮を守るために必要な皮脂まで奪い去ってしまいます。すると、頭皮は乾燥から身を守ろうとして、かえって皮脂を過剰に分泌するという悪循環に陥ります。逆に、シャンプーのすすぎ残しは、毛穴を詰まらせ、マラセチア菌の温床となります。そして、生まれ持った「体質」も関係します。もともと皮脂の分泌が多い脂性肌(オイリー肌)の人は、そうでない人に比べて脂漏性皮膚炎を発症しやすい傾向があります。これらの原因は、一つだけではなく、複数が複雑に絡み合って症状を引き起こしていることがほとんどです。自分の生活の中に、思い当たる節がないか、一度じっくりと見直してみることが大切です。
-
育毛剤・発毛剤の効果的な使い方
育毛剤であれ、発毛剤であれ、その効果を最大限に引き出すためには、製品の品質だけでなく、「いつ、どのように使うか」という、日々の使い方が非常に重要になります。せっかくの有効成分も、頭皮に正しく届かなければ意味がありません。まず、大原則として、どちらも「清潔な頭皮」に使用することです。頭皮に皮脂や汚れ、スタイリング剤などが残っていると、有効成分の浸透が妨げられてしまいます。最適なタイミングは、夜のシャンプー後、髪と頭皮をしっかりと乾かした状態です。特に、お風呂上がりは血行が良くなっているため、成分が浸透しやすいゴールデンタイムと言えます。次に、塗布する際のポイントです。髪の毛につけるのではなく、「頭皮に直接」つけることを意識しましょう。気になる部分の髪をかき分け、ボトルの先端を頭皮に軽くトントンと当てながら、少量ずつ塗布していきます。一度に広範囲に広げるのではなく、数カ所に分けて塗布し、指の腹で優しく馴染ませるのがコツです。この時、爪を立ててゴシゴシと擦り込むのは厳禁です。頭皮を傷つけ、かえって炎症の原因となります。優しく、しかし確実に行き渡らせるイメージです。そして、塗布した後、すぐにドライヤーで乾かしてしまうのもNGです。有効成分が頭皮に浸透するまでには、ある程度の時間が必要です。塗布後は、少なくとも1〜2分は自然乾燥させ、成分がしっかりと馴染むのを待ちましょう。その後、スタイリング剤などを使用する場合は、頭皮になるべくつかないように注意してください。そして何より大切なのが、「毎日、継続して使用する」ことです。ヘアサイクルを正常化させるには時間がかかります。効果が見られないからとすぐに諦めず、最低でも半年は、根気強く続けることが、結果を出すための最も重要な鍵となるのです。
-
脂漏性脱毛症とは何かその正体とメカニズム
頭皮のベタつきや、フケ、かゆみが気になり始めたと思ったら、抜け毛まで増えてきた。そんな症状に悩まされているなら、それは単なる頭皮のコンディション不良ではなく、「脂漏性脱毛症(しろうせいだつもうしょう)」のサインかもしれません。脂漏性脱毛症とは、皮脂の過剰な分泌によって引き起こされる「脂漏性皮膚炎」が頭皮で悪化し、その結果として抜け毛や薄毛が進行する状態を指します。私たちの頭皮には、皮膚を乾燥から守るために皮脂を分泌する「皮脂腺」が存在します。しかし、何らかの原因でホルモンバランスが乱れたり、生活習慣が不規則になったりすると、この皮脂が必要以上に分泌されてしまうのです。過剰な皮脂は、頭皮の常在菌である「マラセチア菌」の格好のエサとなります。皮脂を栄養源として異常繁殖したマラセチア菌は、皮脂を分解する過程で遊離脂肪酸という刺激物質を産生します。この刺激物質が、頭皮に炎症(赤み、かゆみ)を引き起こし、ターンオーバーを乱して、ベタベタとした湿った大きなフケを発生させるのです。これが脂漏性皮膚炎の状態です。この炎症が長く続くと、毛穴が詰まったり、毛根そのものがダメージを受けたりして、健康な髪の毛が育つための土壌が破壊されてしまいます。その結果、髪は十分に成長する前に抜け落ち、新しい髪も生えにくくなる。これが脂漏性脱毛症のメカニズムです。AGA(男性型脱毛症)とは異なり、ホルモンが直接的な脱毛命令を出すわけではなく、あくまで頭皮環境の極端な悪化が原因であるという点が特徴です。